025年11月、EICMAミラノでついに「BMW F 450 GS」が正式発表されました。
A2ライセンス(日本でいう普通二輪上限クラス)対応の420cc並列2気筒エンジン/48ps/車両重量178kgというパッケージに、最新の電子制御と本格的なGSデザインを凝縮した新世代ロアミドルアドベンチャー。

従来のG 310 GSとF 800/900 GSの“隙間”を埋める存在でありながら、そのキャラクターは単なる中継ぎではなく、「誰でも振り回せるリアルGS」としてかなり本気の仕上がりになっています。
本記事では、公式発表値をベースにF 450 GSの特徴・グレード構成・主要スペックを整理し、最後にG 310 GSとの比較表で、どんなライダーに刺さるモデルなのかを解説します。
※本記事の内容は、2025年11月時点での欧州発表情報に基づきます。日本国内仕様・価格は未発表のため、実際の日本仕様とは異なる場合があります。
📌 画像引用 参考リンク・公式情報
https://www.press.bmwgroup.com/global/article/detail/T0453560EN/bmw-motorrad-presents-the-bmw-f-450-gs
https://www.bmw-motorrad.jp/ja/models/adventure/f450gs.html
F 450 GSはどんなバイクか?

一言でまとめると、「軽さ×電子制御×GSブランド」を詰め込んだ新基準ロアミドルGSです。
- 新開発420cc水冷並列2気筒DOHC(135度クランク)
- 最高出力:48ps / 8,750rpm(A2上限いっぱい)
- 最大トルク:43Nm / 6,750rpm
- 装備重量:178kg(フル装備でこの数値)
- シート高:845mm(オプションで830mm/865mm)
- フロント19インチ/リア17インチのGS定番パッケージ
- 6.5インチフルカラーTFTメーター、LEDフル灯火、グリップヒーター等を標準装備
数字だけ見ると「やりすぎてない?」と思うレベルで、同クラスでは頭ひとつ飛び出した装備内容。
小排気量やエントリークラス特有の“簡略版GS”ではなく、そのまま長距離ツーリングや林道も視野に入る本気仕様です。
主なトピック:F 450 GSが「新世代」と言えるポイント
1. 新開発420cc並列2気筒+135度クランク

「450」の名ながら、実排気量は420cc。 A2ライセンス上限(48ps)にピタリ合わせた設計で、
- ショートストローク(72mm × 51.6mm)
- 圧縮比13.0:1
- 135度クランク位相
とかなり攻めたスペック。 高回転まで軽く回りつつ、135度クランク特有の太い鼓動感とトラクションを狙ったキャラクターで、 「扱いやすいけれど、ちゃんと楽しい」領域に振られています。
2. Easy Ride Clutch(ERC)+クイックシフター

F 450 GSのキーテクノロジーがEasy Ride Clutch(ERC)。
- 遠心クラッチ機構を発展させたシステム
- GS Trophyに標準装備(他グレードはオプション)
- シフトアシスタントPro(アップ/ダウンクイックシフター)と組み合わせることで、 発進〜加速〜減速〜停止までほぼクラッチレバー操作不要
- 一方で従来どおりレバーも残り、必要な場面ではライダーが任意で操作可能
- エンジンブレーキはしっかり効かせつつ、アイドリング付近で自動的にクラッチを切ってエンストを防止
ホンダのEクラッチに近い考え方ですが、制御方式は異なり、 「マニュアル感を残しつつラクもできる」というオフロードや渋滞で嬉しい仕様です。
3. 充実の電子制御パッケージ

排気量からは想像できないくらい、電子制御はGS上位モデル級。
- ライディングモード:Rain / Road / Enduro(Exclusive以上でEnduro Pro追加)
- ABS Pro(コーナリングABS)
- DTC:ダイナミックトラクションコントロール
- DBC:ダイナミックブレーキコントロール
- MSR:エンジンドラッグトルクコントロール
- 6軸IMUベースの制御(推定)
Exclusive以上は「Enduro Pro」でリアABSオフも可能。 このクラスでこれだけ“遊べる設定”が用意されているのは強みで、 「初めてのGS」でも、腕が上がっても、しばらく飽きない仕様です。
4. 新設計フレームと足まわり

- エンジンを剛性メンバーとするスチール製ラダーフレーム
- KYB製43mm倒立フォーク(Sport / GS Trophyは減衰調整可能なスポーツサス)
- 中空アルミスイングアーム+WAD(ストローク依存ダンパー)リアショック
- フロント/リアともサスペンションストローク:180mm
- Brembo製4ポットキャリパー+φ310mmシングルディスク(フロント)
「軽さ」と「本格オフロード性能」のバランスをかなり真面目に取りにきた構成で、 同クラスの中でも“走りの説得力”は抜けています。
5. 6.5インチTFT&フルLED装備
- 6.5インチフルカラーTFTメーター(スマホ連携・ナビ表示対応)
- DRL付きLEDヘッドライト(X形シグネチャー)
- LEDウインカー/テール
- グリップヒーター、USB-Cソケット
「小排気量だから簡易メーター」という妥協が無く、 上位GSと同じ世界観で所有欲を満たしてくれる仕様です。
グレード構成(欧州発表情報)
F 450 GSは4つのグレードで展開(欧州仕様)。 ※装備内容や名称は市場によって異なる可能性があります。
Basic(コズミック・ブラック)
- 標準装備のF 450 GS
- キャストホイール
- ライディングモード:Rain / Road / Enduro
- ABS Pro / DTC / DBC / MSR
- 6.5インチTFT / LEDフル灯火 / グリップヒーター
- シフトアシスタントPro、Riding Modes Pro、ERCはオプション
Exclusive(コズミック・ブラック)

Basicに以下を追加:
- オフロードフットペグ
- ハンドガード
- プラスチック製エンジンガード
- クリアウインドシールド
- Riding Modes Pro(Enduro Pro追加)
- シフトアシスタントPro
Sport(レーシング・レッド)

Exclusive相当装備に加え:
- スポーツサスペンション(KYBフロントフォーク減衰調整式)
- スポーティなグラフィック
「オン/オフ問わず走り込みたい人向け」のパッケージ。
GS Trophy(レーシング・ブルー・メタリック)

Sport相当装備に加え:
- スモークラリーウインドシールド
- アルミエンジンガード
- ホワイトハンドガード
- Easy Ride Clutch(ERC)標準装備
最も“GSらしい”イメージと、本格オフロード志向の装備を備えたトップグレードです。
BMW F 450 GS 主要スペック(欧州発表値・抜粋)

- エンジン:水冷4ストローク並列2気筒DOHC 4バルブ
- 排気量:420cc
- ボア × ストローク:72.0 × 51.6 mm
- 圧縮比:13.0 : 1
- 最高出力:35kW(48ps)/ 8,750rpm
- 最大トルク:43Nm / 6,750rpm
- 最高速度:約165km/h
- 燃費(WMTC):約26.3km/L(3.8L/100km)
- 排ガス規制:EURO5+
- ミッション:6速リターン
- 駆動方式:チェーン(525 / 14-48)
- フレーム:スチールチューブフレーム(エンジン懸架)
- サスペンション:F=KYB 43mm倒立フォーク、R=KYBモノショック(WAD)
- サスストローク:F/Rとも180mm
- ブレーキ:F=φ310mmシングルディスク+Brembo 4ポット、R=φ240mm+1ポット
- ホイール:アルミキャスト(クロススポークはオプション)
- タイヤサイズ:F 100/90-19、R 130/80-17
- シート高:845mm(ロー830mm/ラリー865mmオプション)
- 燃料タンク容量:14L
- 装備重量:178kg
F 450 GS vs G 310 GS 比較表
| 項目 | F 450 GS(欧州仕様参考)![]() | G 310 GS(日本仕様現行)![]() |
|---|---|---|
| エンジン形式 | 水冷並列2気筒 DOHC 4バルブ | 水冷単気筒 DOHC 4バルブ |
| 排気量 | 420cc | 312cc |
| 最高出力 | 48ps / 8,750rpm | 34ps / 約9,250rpm |
| 最大トルク | 43Nm / 6,750rpm | 28Nm / 7,250rpm |
| ミッション | 6速リターン+Quickshifter Pro(グレード/OP) | 6速リターン |
| クラッチ | 湿式多板+スリッパー+ERC(GS Trophy標準・他OP) | 湿式多板+スリッパー |
| 乾燥/装備重量 | 178kg(装備重量) | 約175kg(装備重量) |
| シート高 | 845mm(OPで830 / 865mm) | 835mm |
| タンク容量 | 14L | 11.5L |
| ホイール | F19/R17 キャスト(クロススポークOP) | F19/R17 キャスト |
| サスストローク | F/R 180mm | F/R 180mm |
| ブレーキ | F:φ310mmシングル+4pot Brembo、R:φ240mm | F:φ300mmシングル+4pot、R:φ240mm |
| 電子制御 | ABS Pro、DTC、DBC、MSR、ライディングモード各種、Enduro Pro(上位) | ABS(コーナリング機能なし)、基本的な電制のみ |
| メーター | 6.5インチTFT(ナビ・スマホ連携) | デジタルLCD |
| 灯火類 | LEDフル装備+DRL | LEDヘッドライト・テール等 |
| 欧州価格目安 | Basic:7,220ユーロ前後〜(国別差あり) | (日本)740,000円〜 |
価格と日本導入イメージ(2025年11月時点の考察)

欧州発表および海外ディーラー情報では、F 450 GSの価格帯は
- Basic:7,000ユーロ台前半クラス
- Exclusive / Sport / GS Trophy:そこから段階的にアップ
と発表・案内されています。
同時期のG 310 GS欧州価格との差や、日本でのG 310 GS(740,000円〜)の位置付けを考えると、
- 日本導入時のF 450 GSは80万円前後〜台後半程度が目安になる可能性があります(あくまで参考試算)。
- GS Trophyやオプション満載仕様では、もう一段階上の価格帯になる想定。
いずれにしても、「フル装備GSとしては手の届くレンジに収まる」可能性が高く、 G 310 GSオーナーの乗り換え先、あるいは大型GSからダウンサイジングしたいライダーにも現実的な選択肢と言えそうです。
日本導入時に期待されるポイント

現状では排気量が420ccのため、日本では大型二輪免許が必要になります。
ただし、もし日本仕様で400cc以下に調整され「普通二輪免許(中型免許)」で乗れるようになれば、一気に注目度が上がるでしょう。
G 310 GSからのステップアップ層や、扱いやすい中型アドベンチャーを求める層にとって、排気量400cc以下モデルの登場は非常に魅力的です。
個人的には、このクラスに400cc版が出たら「一番売れるGS」になる可能性があると感じます。
どんなライダーに刺さるGSか

F 450 GSは、次のようなライダーに特にフィットするモデルです。
- G 310 GSや250〜400クラスからステップアップしたい
- 900ccクラスまでは要らないが、「ちゃんとしたGS」が欲しい
- 林道ツーリングや未舗装路も楽しみたいが、重すぎるバイクは避けたい
- 最新電子制御やTFTメーターもしっかり欲しい
- 市街地〜ワインディング〜キャンプツーリングまで“全部一台で”こなしたい
「扱いやすいサイズ感 × 本物のGS装備 × ERCによる新感覚」という組み合わせは、 ビギナーからベテランまでかなり幅広い層に刺さるはずです。
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